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  • COLUMN『フィン枚数がマニューバーに与える影響とは!?』

マルチフィンブームの再来か
 ウェイブボードのフィン枚数に変化が起きている。2~3年ほど前から「ツインフィンウェイブ」が脚光を浴び、その実用性の高さが頻りに謳われてきた。シングルフィンよりも上りやすい、暴れない、ターンしやすい、などなどのメリットが並べられた。確かに、明らかにシングルフィンとツインフィンではフィーリングが異なっており、シングルフィンにはないルーズさやマイルドな感覚がある。事実、同じコンディションの中では、ツインフィンのボードの方がシングルのボードよりも大きいサイズで乗れる。それは、適度に調整が効く証拠と言えるだろう。数シーズンを経たツインフィンのウェイブボードは、次第に安定性を増しているし、定着したようにも感じられる。まだまだ一般のユーザーにまで届いているとは言い切れないものの、次に購入するなら「ツインフィン」と考えている人も多いようだ。しかし、そんな心情を惑わせる動きが出てきた。それが「クアッド」と「トライ」。かなり以前に、マルチフィンがもてはやされた時代が思い出される。そのブームの結末は・・。

 

どこで落ち着くかを見極められるか
 フィンの枚数を増やしていくのはどんな目的があるのだろうか。また、それは一般のユーザーにどの様に影響するものなのだろうか。まず、少しいやらしい目で見てみると、商売上の狙いが見えてしまう。シングルフィンのデザインはある程度行き着いたと言えるのだろう。大きく変化させられないとなれば、他の手段を選ぶ。そのひとつの答えがマルチフィン。しかし、ただ闇雲にフィンを増やせば変化があるわけでもないし、ましてや、性能面でのメリットがなければ、やはりユーザーは飛びつきはしないだろう。どうあってもその動きに着いていこうとするのはホンの一部のマニアと言っていいのではないだろうか。2枚、3枚、4枚とフィン枚数にバリエーションがあり、ブランドによって個性もある。こうした少々混沌とした時期は続くと思われる。そして必ず落ち着いてくる。その時に、「やはりシングルに勝るものなし」なのか、「シングルは過去の遺物」なのか。しかしながら、マルチフィンは途上であるとはいえ、かなりのメリットがあることは確かなようだ。この流れに乗ってみることは、上達や楽しみを増やすことに繋がりやすいだろう。敢えて流行に乗ってみる。それもひとつの道筋には違いない。

究極を求めるトップライダーならでは
 さて、もう一方の視点から見ると、純粋にウェイブライディングを突きつけている結果から生まれてきたと言えるだろう。シングルフィンの限界を超え、より深くレイルを入れるためにフィンをマルチにする必要があった。フィンの枚数を増やすことは、レイル寄りにフィンを配置することに繋がる。つまりは、よりレイルのグリップが強くなることを意味する。問題になるのはフィンの位置、長さ、形状の3つ。ボードのデザインを大きく変えずにこの3点を突き詰めていくことが、おそらくは答えに最も近づきやすいはずだ。その意味では、ツインフィンボードの成功が「マルチフィン」の源泉となっている。ツインなくしてマルチはなかっただろう。しかし、こうしたニーズはやはり世界のトップライダーならではのもの。まだまだ自分のライディングさえ安定していない一般のセイラーには考えも及ばない話しだ。ただ、先にも述べたが、性能面でのデメリットがあるものはそう簡単にプロダクション化されない。どんなに一部のライダーが望んだとしても、売れなければ話しにはならないから。需要があるからこその供給。その性能の一部を利用して上達に繋ぐことは我々にもできる。ただただ「新しい物好き」というだけでは終わらず、新しいものを使っていくメリットはかなり大きい。トップライダーが必要だと言うのなら、それに乗っかってみるのもいいのではないだろうか。

何枚のフィンが理想なのだろう
 マルチとは言っても、フィン枚数はブランドやモデルによって異なる。かつては、ベースにシングルフィンがあり、シングルフィンに小さいサイドフィンをつけた「スラスター」や、サイドとセンターのフィンサイズに差がない「トライフィン」が登場し、その後にツインが登場していた。更に言えば、その遙か以前に5枚や7枚のフィンを持つボードもあった。決して普及はしなかったが。今回のマルチフィンは、まずツインから入ってきた。ツインの良さを更に突き詰めようとクアッドに進んでいくブランド。シングルの良さをツインに加えようとしてトライフィンにしているブランド。どちらがいいのかはまだ誰にも判らない。フィン枚数にも理想はないだろう。クアッドといっても、前方のフィンが大きいタイプと、後が大きいタイプがあるし、トライフィンもセンターを小さくしてサイドを大きくすることも可能だし、もちろん反対もある。どんな性能になり、どのようにライディングが変わっていくのか、それはプロのライダー達に任せるしかないだろう。いずれ結論のようなものは出てくるのだろう。

フィン枚数よりもボードの発展に期待
 フィンの枚数を語るよりも、そうしたアイデアや開発によって、ボードが大きく変化する可能性に期待したい。もっと楽に、もっとウェイブが身近になったら、一般のセイラーが簡単にウェイブに取り組めるようになったらどんなにいいだろう。そうしたことを、少し静観してみたいとも思う。振り回されず、惑わされず、といってかたくなにはならず、落ち着いた目でこの「マルチフィン」を見ていきたい。もしかしたら、とても楽しくなるのかもしれない。そんな期待を持ちつつ。

クアッドを発表したSTARBOARDとJP。STARBOARDはレイル寄りに配置された前のフィンの方がサイズが大きい。ツインのグリップ力を更に強める目的だろうか。一方のJPはツインフィンボードをベースにしたクアッド。今までのツインのフィンサイズを抑え、前方レイル寄りに小さいフィンを配置している。これもやはりレイルのグリップ力を増やすのが目的であり、同時にセンター寄りの2枚のサイズが小さくなるために、スライドやスラッシュをコントロールしやすくなるはずだ。ライディングのフィーリングはそれぞれのライダーインプレッションを待つことにしよう。